a bookとthe bookは、どちらも「本」と訳せることがあります。日本語訳だけを見ていると、なぜ英語では前の語を変えるのかつかみにくいですよね。
基本の手掛かりは、会話の相手に「どの本を指すか」がわかるかどうかです。a bookは、ある一冊の本として紹介する場面などで使います。the bookは、聞き手もどの本か特定できるものとして話すときに使います。
「最初はa、二回目はthe」という流れはよくありますが、それだけが決まりではありません。初めて口に出す物でも、二人が見ていてどれかがわかればtheを使えます。小さな図と会話で比べてみましょう。
かばんの中の本を、初めて話題にする
次の場面では、ユイがかばんを持っています。ケンには中身が見えず、ユイがどんな本を持っているかも、まだ話していません。
ユイ ケン
│ │
└─ かばん(中身は見えない) └─ 本の話はまだ聞いていない
└─ 一冊の本
ユイ:I have a book. ― 私は本を一冊持っています。
ケン:Is it interesting? ― それはおもしろいですか。
ユイ:Yes. The book is about animals. ― うん。その本は動物についての本だよ。
最初のI have a book.では、相手にまだ特定されていない一冊の本を、話題に出しています。bookは一冊、二冊と数えられる名詞で、ここではa bookという形です。
その後は、ケンも「ユイが今話した本」だとわかります。ユイがThe book is about animals.と言えば、同じ本について話を続けられます。animalsは「動物」、about animalsは「動物について」という意味です。
ここでのtheは、「前にbookという単語が出たから機械的に付ける」というだけではありません。会話を通じて、二人が同じ本を特定できるようになったことが大事です。a bookからthe bookへの変化には、相手と共有した内容の変化があります。
同じ本が一冊あるだけでは、aとtheは決まらない
最初の図では、かばんの中に本が一冊だけあります。それでも、最初の文ではa bookを使っています。ケンがその本をまだ特定できる状況ではないからです。
「一つしかないからthe」「たくさんあるからa」と、物の数だけで分けるわけではありません。話し手だけがどれかを知っている場合もあります。ユイは自分の本を知っていますが、ケンにそれが共有されていなければ、a bookとして話題に出せます。
反対に、本が何冊もある場所でも、説明を加えて特定できればtheを使えます。次の表は、二人が同じ机を見ている場面です。
| 机の上の物 | 色 | 数 |
|---|---|---|
| 本 | 赤 | 1冊 |
| 本 | 青 | 1冊 |
| ノート | 白 | 1冊 |
この場面でThe red book is mine. ― その赤い本は私のものです。 と言えば、赤い本が一冊だけなので、相手はどの本か特定できます。red「赤い」という説明が、対象を絞る手掛かりになっています。
ただし、赤い本が何冊もあり、指さしや追加の説明もないなら、the red bookだけでは相手が迷うことがあります。theを付ければ自動的にどれかが伝わるわけではありません。言葉・視線・指さし・それまでの会話を合わせて、相手がわかる状況かを考えます。
初めて話す窓にもtheを使える
今度は、ユイとケンが同じ小さな部屋にいる場面です。この部屋には窓が一つだけあり、二人とも見えています。窓については、まだ会話していません。
┌───────────────┐
│ 窓(この部屋に一つ) │
│ │
│ ユイ 机 ケン │
│ │
│ ドア │
└───────────────┘
ユイ:Please open the window. ― 窓を開けてください。
openは「開ける」、windowは「窓」、Pleaseを付けたこの文は「〜してください」という頼み方です。windowという単語が初登場でも、the windowを使っています。二人とも、部屋にあるその一つの窓を指しているとわかるからです。
これが、「最初に出てきた名詞は必ずa」という覚え方では足りない理由です。会話の中で前に言ったかどうかだけでなく、目の前の状況も共有の手掛かりになります。
もし二人から見える窓が三つあり、どれを開けるか決まっていないなら、「どれか一つの窓を開けて」という意味でPlease open a window.と言う場面が考えられます。一方、指さした窓を開けてほしいなら、相手に対象が伝わる状況でthe windowを使えます。
aとtheの違いは、現物の見た目を変えるものではありません。話し手が、その物を相手にどのようなものとして示しているかが変わります。図を見ながら「ケンなら、どの窓かわかるかな」と聞き手の側に立ってみましょう。
自分で選ぶときは、場面を一言添える
aとtheで迷ったら、英文だけを見て当てる前に、次の三つを確かめてみてください。
- 何について話しているかを決める。今回はbookやwindowのような物。
- 相手も「どれか」を特定できる手掛かりがあるか探す。
- ある一つとして紹介するならa・an、特定できるものとして話すならtheを候補にする。
実演として、まだ犬の話をしておらず、相手には犬も見えない場面を考えます。I have a dog. ― 私は犬を飼っています。 と話題に出し、続けてThe dog is small. ― その犬は小さいです。 と同じ犬を説明できます。
ここで大切なのは、後のThe dogが、最初のa dogと同じ犬を指すというつながりです。別の犬を新しく話題にするなら、「前にdogが出た」というだけでtheを選べません。何を指すかを追いながら読みましょう。
また、aとanの違いは、直後の音に合わせる違いです。ある一個のリンゴを話題に出すならan appleで、そのリンゴを共有して話すならthe appleとなります。a・anの音の選択と、a・theの対象の示し方は、別の観点です。
名詞の前へ必ずaかtheを入れるわけでもありません。my book「私の本」ではmyを使い、my the bookは誤りです。今回の基本例を、すべての名詞にそのまま当てはめないようにしましょう。
ノートで練習するなら、英文の上に「相手は初めて聞く」「二人とも見えている」など、短い場面を書きます。場面が何もない空欄ではaとtheの両方が考えられる場合もあるので、問題に付いている会話や図まで読む習慣を付けてみてください。
確認問題
- 相手には中身が見えず、本の話も初めてです。ある一冊の本を紹介するならどちらですか。I have (a / the) book.
- 1で紹介した同じ本について、続けて説明します。相手もその本だとわかっています。(A / The) book is old. ― その本は古いです。
- 二人がいる部屋には、見えている窓が一つだけあります。窓の話は初めてですが、その窓を開けてほしいときはどちらですか。Please open (a / the) window.
解答・解説を開く
- a。この設定では、相手がまだ特定していない一冊を新しく紹介しています。
- The。最初に紹介した同じ本だと、二人ともわかる流れです。文頭なのでTを大文字にします。
- the。初登場でも、二人が見ている一つの窓だと特定できます。初めて言う名詞が必ずaになるわけではありません。
今日の一歩は、机の上の物を一つ選び、「初めて相手に紹介する場面」と「相手もどれかを知っている場面」を想像することです。相手にどこまで伝わっているかを考えると、aとtheの違いが見えやすくなります。
